リニモ連携が肝、イオンが推進役 長久手古戦場駅周辺の開発

2011年度に市制に移行する長久手町。行政側はリニモを基軸にいっそうの都市的発展を遂げる構えだが、鍵となるのは中央地区と呼ばれる「長久手古戦場駅」周辺の開発だ。土地区画整理組合の設立準備が進むほか、イオングループの商業施設進出がこのほど内定。長久手の新しい“核”が動き始めた。

 町の第5次総合計画は、同駅周辺を「本町の新たな顔(シンボル・コア)として整備します」とうたう。広場と商業施設を組み合わせた「リニモテラス」をつくり、交通・商業・行政といった複合的な機能をもたせるという。町有数の重要拠点に生まれ変わる。
推進役となるイオングループの商業施設は、区画整理予定地のうち駅北側の3・9ヘクタールに及ぶ。駅とデッキで結ばれる。リニモ利用につなげる仕掛けや、隣接する古戦場公園との連携も期待されており、13年度のオープンを目指す。

 区画整理は駅周辺の27・4ヘクタールが対象。これまでに地権者の約80%、面積にして約85%の同意を得た。地権者でつくる発起人会は本年度中の組合設立を目指し、協議を重ねている。事業の計画人口は約1700人。

 リニモがあるからこそ開発が進み、開発で施設や住宅が張り付くと乗客は増える-。県や町の青写真では、リニモと開発は両輪だ。県や沿線市町が将来像を描いた「リニモ沿線地域づくり構想」では、古戦場駅周辺は西の起点。他駅の沿線開発を促す可能性もある。

 ただ、農村と都市が交流する「農都共生」、万博理念の継承を掲げる町にとって乱開発はご法度だ。注目されるのは、都市機能を駅周辺の中心部に集約する「コンパクトシティー」の発想。町都市計画マスタープラン策定委員の松本幸正・名城大教授(43)は「自動車を利用せず、緑を豊かにすれば環境負荷を軽くできる」と利点を話す。住民の生活の質を高め、行政コストを抑える効果も考えられる。

 期待あふれる一方で、懸念もないわけではない。「人口減少や産業の成熟など、右肩上がりの時代ではなくなった。従来の沿線開発は通用しないかもしれない」と松本教授。

 勢いに乗る長久手町を支えるのは人口増加だが、ピークを過ぎた後も活力を持続できるかどうか。中央地区での事業の成否は「市」となる長久手像を大きく左右しそうだ。

 (松本浩司)

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