ハウステンボス(HTB)。園内ホテルのバーで、あるいは海に面したウッドデッキに腰掛けてだったかもしれない。その手紙は、HTBでしたためていると書いてあり、HTBの東園基宏社長あてに投かんされた。
長崎出身の歌手、さだまさしさんを社長や親善大使に--。
集客増への切り札。手紙には園内で買ったHTBのレターセットで、さださんに便りを出すともあったという。県内の女性からである。
福岡の男性は、パリ-イスタンブール(トルコ)間などを結び、近く廃止が伝えられているオリエント急行の車両を持ってきて、ホテルにしてはどうかとつづっていた。アガサ・クリスティーの推理小説でも知られた列車である。鉄道ファンに限らず、アガサファンも訪れると。
HTBの経営不振が表面化した7月以来、東園社長あてに毎月10通、顧客センターには1日10通前後の激励の便りやメールが届いているといい、中には紹介したような提案も含まれている。
改めて種々の数字を聞いてみると、92年の開園以来の入場者は5000万人(うち海外客380万人)。宿泊者数は800万人。挙式は5000組。現在、年間パス所有者は10万人。大変な蓄積があっての激励だろう。
HTBの行方は今、新聞なら経済欄をにぎわすばかりで、改めてその魅力が語られることなく、残念な気がする。便りには自ら返信しているという東園社長は「大変ありがたく、(今掲げる)ボタニカル(植物)リゾートとしての魅力とお客様の満足度の向上に努めていきたい」。ファンとの共鳴を続けてほしい。
実は、バーとウッドデッキが居心地いい私からの案も一つ。今春のダイヤ改正で九州の寝台特急が姿を消した。東京-HTB駅間での復活はできないか。週末だけでいい。オリエント急行くらい優雅な旅を売りに。<佐世保支局長・小川敏之>
〔佐世保版〕