ガラス大屋根の開放感、5代目大阪駅が全容現す

2011年春の完成を目指し、全面改装中のJR大阪駅の外観がほぼ完成した。初代から数えて5代目。来春、九州新幹線鹿児島ルートの全線開通に伴い、新大阪―鹿児島中央間を直通する「さくら」もデビューし、大阪駅は九州から関西に訪れる観光客らの集客の要としても期待が高まっている。

キタ玄関に光あふれ
 最大の特徴は、シンボルのガラスの大屋根(東西180メートル、南北100メートル)。駅北側にできる新北ビル「ノースゲートビルディング」(28階建て)の12階から、線路をまたいで、駅南側の「サウスゲートビルディング」に向け、斜め下に張り出している。ヨーロッパでは一般的だが、日本では極めて珍しい。

新北ビルは、専門店が入る東側と、低層階に「JR大阪三越伊勢丹」、高層階にオフィスなどが入る西側に分かれる。

 アクティ大阪を増築した「サウスゲートビルディング」とは2階建ての橋で結ばれる。下層部は橋上駅舎と連絡通路、上層部は「時空(とき)の広場」として整備される。九州新幹線「つばめ」を手がけた工業デザイナーの水戸岡鋭治さんが監修した。


 今月10日、一足早く、新北ビルの内部を歩いてみた。

「駅のあらゆる場所から列車が見える。精巧なジオラマみたいでしょう」

 阪急梅田方面と新設の橋上駅舎を結ぶ歩行者の新たな動脈となる新北ビル3階のデッキ。工事を仕切るJR西日本の村田直紀・大阪駅改良工事所長が胸をはった。見下ろすと、新快速や大阪環状線があわただしく発着を繰り返す。

 新北ビル中央部分には高さ約35メートル、幅約44メートルの巨大な吹き抜けの空間がある。

 今度は、吹き抜けの中央部にあるエスカレーターの上(新北ビル7階)から眺めてみた。

時空の広場はクレーンが置かれ、鉄板がむき出しのままだが、完成後、床面はウッドデッキになる。ホームの屋根も取り払われるため、1日約1400本が行き交う列車を手に取るように見ることができ、鉄道ファンには絶好の撮影場所となるだろう。

 大阪駅再開発プロジェクトの責任者である宮崎博司・大阪ターミナル開発チーム課長は「列車に乗るためだけでなく、人が集う場にしたい。行き交う列車や大屋根が生み出す開放感が、人を楽しませる雰囲気を演出してくれると期待しています」と話した。

 JR西は5年前、乗客106人が死亡した福知山線脱線事故を起こした。以来、安全投資に力を注いできたが、今後も安定的に資金を確保するためにも、関西の玄関口である大阪駅の集客力がカギとなる。(社会部 井口馨)

 JR大阪駅 初代駅舎は木造れんが造りで、神戸―大阪間が開通した1874年(明治7年)頃にできた。4代目は1979年に完成したが、狭いうえに階段が多く、時代に合わなくなった。2004年5月に全面改装に着手し、総事業費は約2100億円。6月末現在の全体の進捗(しんちょく)率は63%。

(2010年8月14日 読売新聞)

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