屋上菜園、壁にアイビー 緑化ビジネス県内も盛ん 

街に緑を増やす動きが全国で広がっている。兵庫県は、ビルなどの屋上緑化の面積が都道府県で上位に入るなど、全国有数の先進地。関係する企業も多く、最近は屋上や駐車場だけでなく、室内外の壁面活用、屋上の菜園化、土なしでも室内に緑を取り込める商品の開発など、さまざまな空間の緑化に乗り出している。(阿部江利)

 総合建設業の村上工務店(神戸市兵庫区)は2007年11月から、室内に特化した壁面緑化システムの「プラントウォール」を手がける。壁にアイビーなどの植物を密生させ、タイマーで水やりや光を管理する仕組みで、「空気をきれいにする効果を狙う」という。鉢植えのように店の有効面積を犠牲にしないで緑化できる利点もある。

 国内では現在、ブティックなどの店舗3カ所で導入されている。同社は「ここ1年は問い合わせが相次いでおり、手応えを感じている」という。

 屋上にウッドデッキを設置し、一部を菜園にする事業を今年から始めたのは、木材加工のフレシオンかめや(同)。植物栽培による癒やし効果やコミュニケーションの円滑化などが期待できるとして、大阪市の大型複合施設「アジア太平洋トレードセンター(ATC)」でも導入される予定。菜園は一般向け貸農園として活用されるという。フレシオンかめやの井上豊社長(67)は「県内にも菜園化できる場所が多く、需要は広がるはず」と期待する。

 このほか、鉄スクラップなど売買のダイハチ(神戸市東灘区)は今年6月、水耕栽培用の室内向けプランターを発売した。ペットボトルを差しておくと水分を適量補給してくれる仕組み。土を使わないため取り扱いが簡単。営業担当の武本栄介さんは「病院や店などで100個程度が売れた。オフィスや家庭の緑化に活用してもらえれば」と販路拡大を目指す。

 国土交通省が全国の造園建設や資材業者などを対象に実施した調査では、08年度の全国の新規屋上緑化面積は約33・6ヘクタールで、前年比1割ほど減少した。一方、壁面緑化は約7・5ヘクタールで、前年比で約5割も増加している。都道府県別の屋上緑化面積では、東京が全体の35%を占め、神奈川、愛知、大阪、兵庫の上位5都府県で約7割を占める。兵庫は、08年度に全国3位となる約3万450平方メートルが屋上緑化され、2000年からの累計でも5位と多い。壁面緑化も累計2位となっている。

行政も後押し

 行政の後押しも進む。全国では、名古屋市や横浜市が、比較的大きな敷地に住宅を建てる場合に、一定の緑化を義務づけている。

 兵庫県でも、建物の敷地や屋上、壁面の緑化などは「環境の保全と創造に関する条例」で緑化義務を定めており、建築面積が1千平方メートル以上の建物とその敷地にかかる緑地が対象となる。また、義務分を上回る緑化をしたい場合や自発的に緑化に取り組みたい団体などには、10年度までは「県民まちなみ緑化事業」で補助金などが受けられるケースもある。

 県県土整備部都市政策課によると、09年3月末時点で、同条例の対象として約30ヘクタール(対象には壁面緑化や太陽電池設置面積なども一部含む)の建築物緑化計画の届け出がある。同課は「今後もより一層、都市緑化を進めたい」としている。

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