市橋容疑者、「イノウエ・コウスケ」と名乗る

「変わった男と思っていたが、まさか指名手配犯だったとは」。英会話学校講師のリンゼイ・アン・ホーカーさん(当時22歳)の殺人・死体遺棄事件で、死体遺棄容疑で指名手配されている市橋達也容疑者(30)が、1年余りも大阪に潜伏していたことが明らかになり、手配容疑者と職住を共にしていたことを知った元同僚らは、驚きの声を上げた。

 事件当初の手配写真とは「別の顔」だったといい、すでに複数回の整形手術を終えた後だったとみられる。

 「あいつや」「間違いないで」。市橋容疑者が今年10月11日まで、住み込みで勤務していたことが判明した大阪府茨木市内の建設会社の元同僚らは、5日に千葉県警が公開した市橋容疑者の顔写真を見て、口々に声を上げたという。

 元同僚らによると、「イノウエ・コウスケ」と名乗る男は昨年9月10日、大阪市西成区で作業員を募集していた同社幹部に自ら、「使ってくれますか」と売り込んだという。

 身長は、市橋容疑者と同じ約1メートル80。あごひげを生やし、髪の毛は、耳の後ろがくせ毛のようにカールしていた。関東地方の言葉遣いで、「横浜から来た」「東京や名古屋にいたこともある」と話していた。

 ◆いつも赤い帽子と黒縁の眼鏡、胴巻きには現金◆

 土木作業員の経験はなかったようだが、まじめに仕事を覚えていった。上司には「おはようございます」と大きな声であいさつをする一方、同僚との交流はほとんどなく、休日は部屋にこもって漫画を読んでいた。赤い帽子と黒縁の眼鏡を外した素顔を見られたくないためか、風呂は必ず一人で入っていたという。

 今年4月に全員でボウリングに行ったのが、数少ない付き合い。この時も、嫌がるのを同僚が無理やり連れて行ったという。ボウリング場で撮影した記念写真でも、前の人に隠れるように写っていた。

 「金に細かい」というのがもっぱらの評判で、同僚らとギャンブルに興じることもなく、現金を入れた胴巻きを常に身に着け、風呂にまで持ち込んでいた。「なんでそんなに金を持ってるの」と尋ねられると、「親に仕送りする」「100万円返さないといけない人がいる」などと話していたという。

 男は10月11日朝、給料を受け取って、そのまま姿を消した。部屋には、ビデオデッキや大量の漫画本が残されていた。

 元同僚は「『イノウエ君は変わった子やなあ』とうわさしていたが、まさか、市橋容疑者だったとは。今思えば、整形手術代をためていたのだろうか」と話した。

(2009年11月9日14時44分 読売新聞)

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