12月1日0時37分配信 毎日新聞
夢の超特急が44年の歴史に幕を下ろした。30日に定期運転を終え、引退した初代新幹線・0系。最終便「こだま659号」に乗車した。車内で、そして沿線の各駅では、大勢のファンや家族連れらが最後の雄姿を目に焼き付け、自分たちの人生と重ね合わせた。夕方、終着の博多駅で最後の警笛が「プワーン」と鳴り響いた。また一つ「昭和」の象徴が姿を消した。
午前7時、岡山駅。午後2時51分の659号の発車まで、8時間近くあるが、ホームには2人の男性がいた。1番乗りした札幌市の男性会社員(39)は「修学旅行で初めて新幹線に乗り、初めて富士山を見た。0系は昭和そのもの」と話した。
午後、最後の「だんご鼻」が岡山駅ホームに入ってきた。ホームは、カメラや携帯を向ける人、手を振る人でいっぱいだ。運転士は永田満志(みつし)さん(59)。高校卒業後の1969年、新幹線にあこがれて国鉄に入り、0系の整備係を経て、75年に運転士になった。永田さんは「0系はずっと自分のそばにあったもの。最後の運転ができて光栄です」と語った。
デッキで写真を撮っていた広島県三原市の会社員、寺井祐司さん(44)は「0系は私と同い年。一緒に生きてきたという気持ちです」。広島駅ホームでは、列車に最敬礼する制服や作業服姿の社員が目に飛び込んできた。車内が静寂に包まれる。「泣けるなあ」。誰かがつぶやいた。新関門トンネルを抜け、博多駅が近づくと車掌の案内放送が始まった。「44年の長きにわたり、0系をご愛顧いただきありがとうございました。お別れの言葉とさせていただきます」
午後6時24分、定刻より3分遅れで博多駅到着。全乗客を降ろした0系は警笛を鳴らし、姿を消す。大きな拍手が起こった。
◇さよなら運転も指定券売り切れ
JR西日本はファンの要望に応え、12月6、13、14日に「さよなら運転」として、新大阪-博多間などで0系による臨時「ひかり」を運行する。全席指定の指定券は既に売り切れている。【小林祥晃】